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第1回 縮小する製造業。未来を照らす7つの実践
貫く。原理原則。 ZERO1多田夏代の、工場収益カイゼン革命 多田夏代(ZERO1)  
構成)日経BPコンサルティング

日本のものづくりの力が落ちている―。もう何年もいわれている言葉です。しかし具体的にどんな力が落ちているのか、それは自社にも当てはまることなのか、きちんと分析して理解している企業は多くないようです。足元のぬかるみに気をとられて回り道をしないように、ときには俯瞰的に状況を把握しなければなりません。

多くのメーカーの体質改善を支援している経営コンサルタントの多田夏代氏が、製造業の現状と、そこで勝ち残っていくための課題抽出の仕方、その課題の解決法を、3回に分けて指南します。

目の前しか見ない経営者

製造業のコンサルタントを続ける中で、気になっていることがあります。それは、将来を見ずに直近の課題にのみ気をとられている経営者や管理職者が、非常に多いということです。

将来的に日本の製造業がどうなって、その中で自社の工場がどうあるべきかを考えず、目先の収益、目の前の課題の解決にのみ気をとられている。その結果、小手先だけの改善が進められ、いつまでも根本的な改革ができない。これでは、他国の勢いや大胆な決断に取り残され、この先に迫る世界情勢の急速な変化に対応できないかもしれません。

以下、日本の製造業が今後直面する環境の変化を具体的に挙げてみます。これらは、けっして遠い未来の話ではありません。5年後、10年後、今働いている皆さんがまだ現役でいる間に、確実に起こりうることです。これからも長くものづくりを続けるために、今、知っておくことが重要です。

重要1. 座すは後退。就業者の争奪戦

まず、各国のGDPに占める製造業比率を見てみましょう。

大雑把にいうと、中国や韓国が約3割、日本とドイツが約2割、アメリカ、イギリス、フランスが約1割という現状です。社会の成熟化が進むに従い、製造業の割合がどんどん低下していくことがうかがい知れるのではないでしょうか。

次に、主要国の全就業者数に占める製造業就業者の割合を見てみます。今世紀に入って各国とも減少傾向が続いており、特にイギリスやフランスでは、グラフのように大きな減少幅が見られます。ただアメリカは2010年を底に、微増傾向が見られます。これはIT関連業界の活況が一助になっていると考えられています。

日本に目を転じると、2000年の20.5%から12年の16.9%まで、イギリスやフランスほどの急角度ではないにせよ、直線的に減少が進んでいます。

一方、主要国における研究開発投資額の推移を見ると、各国とも着実に増えていることが分かります。これは、どの国も工場の省人化や先進分野での開発など、次世代型製造業への転換を目指している現れだといえます。

これらのデータから、何を読み取ることができるでしょうか。まず、今後ますます成熟化が進む日本において、製造業の規模が今より大きくなるとは考えにくいこと。IT関連など先進技術分野へのビジネスモデルの転換が、いっそう進み、自ら進んで製造業に就こうという人は減少の一途をたどる可能性があること。

つまり、今までと同じものづくりではなく、自社の魅力を積極的に訴えていくなど、何らかの手を打たなくては、製造業は就業者を獲得できない時代が来ると考えられるのです。

さらにそんな状況では、獲得した就業者の待遇も見直す必要が出てきます。例えば自分たちがかつて教わったときのような厳しい言葉や「背中を見て仕事を覚えろ」という姿勢をそのまま実践したのでは、人が離れてしまいかねません。事業が継続できなくなる可能性もあるのです。

重要2. 働き方改革は工場でもマスト

製造業就業者の減少は多くの先進国に共通する傾向ですが、中でも日本は強く危機感を抱く必要があります。というのも、日本はほかの先進国に比べて、明らかにワークライフバランスが崩れているものの、改善が進まない実情があるためです。

例えば男性の就業者、いわゆる勤め人全般の生活を見ると、アメリカやフランスでは残業時間の平均が30分強であるのに対し、日本は92.3分。約3倍です。帰宅時間を見ると、米仏が18時過ぎであるのに対し、日本は20時過ぎ。出社時間は3カ国ともほぼ変わりません。日本人は、他の先進国の人に比べ、家庭での生活時間が大きく損なわれていると分かります。

グローバル化が進む今、海外でも通用する人材にとって、このような状況にある日本の企業は魅力的な勤め先でしょうか。せっかくものづくりをするなら、海外で家族との時間を大切にしながら働こうと考えても無理はありません。優秀な人材が国内からいなくなってしまう懸念があるのです。

賛否両論があるものの、そうならないように、製造業においても働き方改革を進めなければなりません。

重要3. 雇用形態を広げる

超高齢化社会といわれますが、実は2017年を境に65~74歳の割合は減り始めます。実はそれよりも増えるのが、75歳以上の割合です。また、工学や理科学系の学生が少ないことから、2019年には、IT技術者が不足し始めるとも推測されています。

いくら自動化や省人化が進んでも、生産現場には「人」が不可欠です。その「人」の確保が非常に難しい時代が、すぐそこまで迫ってきているのです。もはや生産性や品質さえ追求していれば明るい未来があるという時代ではなくなっているのです。

2023年には人件費の高い50代が増加し、人件費がピークを迎えます。2053年には人口が1億人を割り込み、生産人口が絶対的に不足します。2053年というと、今から35年後。現在、入社数年という若い人は、まだまだ現役で活躍している時代です。そのときに自社が社会に価値を提供し続けるには、どうしたらいいのでしょうか。

技術者の確保、高齢者の活用や外国人の採用、女性も働けるようにするなどの準備、これらの様々な従業員をまとめられる管理職の育成・確保を進めなければならないことは言うまでもありません。

重要4. 未来を照らす7つの実践

これらを踏まえて、今後の製造業のあるべき姿、進んでいく方向性を、私は以下の7つに集約できると考えています。

高齢者や外国人が、働きたい、働き続けたいと思えるような職場をつくり、不得手な分野は割り切って海外に任せ、得意な分野に資源を集中させる。その得意分野も、匠の技を磨いて他社に真似できない領域をつくっていく。そして、「学んでもらう」という気持ちで若い人に確実に技術を伝え、それでも人手が足りない部分を省人化・自動化する。もちろん、常に他を凌駕する品質・生産性向上を図ることも不可欠です。

日々、翌日の出荷のことで頭がいっぱいかもしれませんが、同じものを同じようにつくっているだけでは、早晩確実に立ち行かなくなります。上記の7つを全社的に共有し根本から工場を改革することが、今の時代にするべきことなのです。

次回は、具体的な改善の進め方を見ていきましょう。

2018年2月15日

  • :掲載情報(企業情報・部門名・お役職名などを含む)は、初版制作時のものです。

多田 夏代(ただ なつよ)

株式会社ZERO1 代表取締役

防衛省で防衛装備品(電気通信機器・特殊車両・航空機・武器弾火薬庫等)の原価積算を10年間担当。その後、防衛省での経験を活かして、製造系コンサルティング会社にて、購買コストダウン、原価管理・製造の機能改善を得意とする実践型の数値効果の創出にこだわる工場コンサルタントとして、12年間勤務。多くの企業を支援してきた。訪問工場数は防衛省時代を含め、現在まで約150工場以上を数え、さまざまな業種業態での工場収益を改善し続けている